言語聴覚士パパの奮闘記

1児のパパ兼言語聴覚士が小児療育で頑張っていることを書いています

バイリンガルの子供の言語発達

今回はバイリンガルの子供の言語発達について書いてみようと思います。

バイリンガルとは、「二言語を自由に使いこなす人」を言います。

両親のうちどちらかが外国人のお子さんで、家では英語、教育は日本語などの言語環境で育っている子どもです。

国際化で多くなっている印象にあります。しかし、そうした子どもたちに対する言語発達支援はかなり難しいと考えます。

そこらへんも理由を考えながら書いてみます。

 

 

バイリンガルは言語発達が遅れるのか?

親御さんのご相談で、「2か国語だと言語発達に影響したり、どちらも育たないことはありますか?」という質問があります。

結論から言うと「バイリンガルが直接的な要因となって遅れることはない」との研究が散見されています。

もちろん単一言語より2か国語のほうが語彙数、文法構造、音韻認知などが求められることが確実に多くなります。

ですが、子どもが日々、2か国語のある環境に置かれていても、混乱せず、どちらも獲得しながら成長するということです。

しかし、ここでの注意点があります。

それは、極端な環境でないこと、言語発達を遅らせる可能性のある障害がなければの話であることです。

極端な環境とは、言語発達期に海外に移り住みガラッと言語環境を変えたりすることです。

環境要因で一時的に言語の遅れは生じると考えます。

他の障害とは、ASDや知的障害などの元々脳の機能的に困難さがあり、それらによって言語発達遅滞は生じる可能性があるということです。

例えば、子供が2か国語を要求される環境におり、明らかに言語発達が遅れがみられたとき、何らかの障害の特性による影響が大きいと考えます。

そして、状況によってはどちらも遅れてしまい母語が定まらないという可能性もゼロではありません。

これをダブルリミテッドバイリンガルと言います。

 

バイリンガルの言語発達障害の評価について

評価においては、認知面、運動面、言語面と他に気になることがあれば標準化されたスケールで評価していきます。

しかし、ここで難しいことは、2か国語どちらも評価しなければ、正しい評価は取れないというところです。

例えば、英語はかなり理解しているが、日本語は年齢に比して遅れている子に対して、日本語だけの評価をしてしまうと、もちろん本来の能力よりかなり低く評価してしまいかねません。

ですので、正しい評価をするためには、英語と日本語のどちらも評価する必要があるということです。(日英バイリンガルの場合。)

もちろん、2か国語が中国語と日本語であれば日中の評価という具合になります。

これを聞くと正確な評価はかなり難しいですよね・・・。

(日本でどれくらいのところで対応可能なのでしょうか。)

ですので、家での会話場面の状況を詳しく聞くのも一つ重要だと思います。

あとは、生活での問題行動などもしっかり見ていく必要があります。

 

対応について

それでも言語が遅れていますと相談に来られることがあります。

まずは、お困りごとを傾聴します。

次に生活上の困りごとを聴取し、その児童の傾向や特性を把握します。

その後に先ほど述べた言語の評価などをお伝えしています。

そして、現在考えられる適切なアプローチを検討・提案していきます。

もちろん私は英語が出来ませんので、英語での評価・アプローチはできません。

 

もう一つは環境調整が必要と考えます。

先ほど、バイリンガル自体が言語発達遅滞の直接的な原因ではないことを述べましたが、もし脳の機能的に困難さがあるのであれば、言語環境を理解しやすい方に変えていくべきと思います。

具体的には、使う言語を環境や人で統一した方がよいということです。

学校では日本語、家では英語を話す。

母親とは日本語、お父さんとは日本語、友達と先生とは日本語を話す。

もしくは難しいですが、ほとんど日本語or英語だけの環境にする。

などが考えられます。

支援者はむやみやたらに日本語と英語交じりの語り掛けは辞めた方がいいと思われます。

あとは、簡単な語彙を使い、なるべく短い文章でゆっくり話す必要があります。

これは、言語発達遅滞の子どもにもよくしますね。

十分に理解してもらうことを目的としています。

また、自分の気持ちを表現できず、心理的な負荷がかかっている子どもも少なくありません。

なるべく1対1で傾聴してあげる、あなたの気持ちはとてもわかるよと伝えてあげることも大切だと思います。

 

今後、国際結婚が増えていき、バイリンガルの子供も増えていくと考えます。

母語がない子供は学習からも取り残され、困難な道を歩みます。

STとして、そうした子供たちの力にもなれるよう努力していきたいと思います。

 

以下の本が一番参考になると思います。

 

お読みいただきありがとうございました。