言語聴覚士パパの奮闘記

1児のパパ兼言語聴覚士が小児療育で頑張っていることを書いています

ADHDの子どもについて思うこと

今回はADHD傾向のあるお子さんについて書いてみようと思います。

ADHD傾向のお子さんは、不注意、衝動性・多動性がみられますが、これも子供によっての差や、他の障害の併存などでことなる部分があります。

ですので、下記のことは全てのお子さんに当てはまるとは必ずしも言えないので参考程度に読んでください。

 

 

ADHDと前頭葉機能

成人領域で勤めていたときに、いわゆる前頭葉機能(抑制、遂行、注意、判断、感情コントロール等)に対して評価、訓練、支援を行うことが多々ありました。

いくつか例を挙げると

  • 1時間くらい一方的に話し続けてしまう
  • 後出しじゃんけんで相手につられてしまう
  • 他患者や病棟スタッフと口論になりやすい
  • 切り替えが出来ず同じことをし続けてしまう

いずれも普段の生活で意識されていないながらも、これらの機能はかなり重要な機能であるとわかります。

 

小児ではどうでしょうか。

  • 座っていてと伝えられたのにすぐに歩き回るかもぞもぞし続けている
  • 人の話を聞いているようで全く聞いておらず、異なる行動をしてしまう
  • 友達のおもちゃを「かして」という前に手がでてしまう
  • 順序が立てられない
  • 忘れ物がかなり多い

この様子から考えると、前頭葉機能における注意や抑制、判断などはADHDの主症

状である、不注意、衝動性・多動性とかなり強く関連している印象にあります。 

また、成人と違い、脳の成長途中でありますので、もともと抑制や注意が不安定であるという部分も影響していると思います。

 

また、岡崎(2011)では、

『ADHDにおいてはこの中で前頭前皮質と脳幹網様体との結合経路の機能不全が生じていると想定されます。』

と述べられています。

これらを考えるとADHDは、前頭葉機能障害と近い部分が多くあり、また、前頭葉機能へのアプローチと同じ部分があるということが推察されます。

 

ADHDの子どもと接しているとき

○○くん、お菓子準備するから、椅子に座って待っててね

うん!

~数十秒後~

○○ちゃん、待てー!(走り回る)

○○くん、走らない!座って待っててと言ったでしょう!

はーい(あまり聞いていない)

 

こんな場面がよくあります。

何かの報酬があれば座っていたりすることもありますが、それでももぞもぞしたり、指しゃぶりなどの自己刺激を入れることが多いです。

これを見ると、おそらく何とか頑張って座っていようとされるがための、随伴症状的なものかなと感じます。

私は随伴症状が出た際は無理に止めたりはせず、見て見ぬふりをするようにしています。

 

少し意地悪い?

こういう場面もみられます。

○○ちゃん、だめだよ!(相手のおもちゃを奪い取る)

えーん!泣

どうしたの?

だって○○ちゃんがダメな遊び方してたんだもん!

先生が言うから大丈夫だよ

 

少し意地悪さや自分の考えを他者に強要する場面が多くみられ、トラブルになることがあります。

また、貸し借りで先に手が伸びてしまう、「貸して」を言っているが相手が「いいよ」という前に取り上げてしまうなどもみられます。

もちろんADHDでない子もそうした部分がありますが、何度注意しても同じ行動をしてしまう傾向にあります。

そして、そうした行動による他者からの注目が、行動の報酬として機能することもあります。

 

ADHDに対する支援とは

これらの児童に対して何がいいのかを考えてみます。

先ほども述べたようにおそらく前頭葉機能への認知的なアプローチが必要だと考えます。

(もちろん薬物療法も有効だと思いますが、関与する範囲ではないのでおいておきます。)

昼田(2011)「ADHD のある児童に対する認知リハビリテーション」では、

『薬物療法と併用されることの多い治療の第 2 選択肢はペアレント・トレーニング
やソーシャルスキル・トレーニング(SST),夏期集中治療プログラム(サマーキャンプ)などの行動療法である。』

とあります。

さらに、薬物療法と第2選択肢の方法は限界があるとしたうえで、

『小児期の脳の可塑性(resilience)を考慮すれば,ADHDのある小児に対し,できるだけ早期に適切な認知リハを実施することで,より根治的な改善効果が得られる可能性がある。』

としています。

 

簡単にいえば、脳の機能そのものが障害されているのだから、脳の機能そのものにアプローチすべきであるという考えです。

簡単な例を挙げると、衝動性には調息法や衝動抑制訓練を実施し、結果では有意に破壊的行動が減り、学業成績が上がったというものもあります。

全て鵜呑みには出来ませんが、実施してみる価値はあると思います。

詳細は論文を参照してください。

(成長とともに軽減するから、適当な療育で叱って強制し周囲の子どもと無理に適応させる指導は論外と思います。療育とは呼びません。)

自尊心の低下と二次的障害

ADHDに限らず発達障害の子どもは怒られ続ける日々を送ることが多いです。

なんで座ってられないの?

なんで意地悪するの?

あなたが悪いのよ、ちゃんとしなさい!

でも、子どもは言われていることが分かっていても勝手にしてしまうもどかしさがあります。

「なんでいつも私だけ怒られるの・・・。頑張っているのに・・・。」

いつの間にか鬱や気分障害、睡眠障害などの2次障害に至ることもあります。

私は周囲の大人がこれを防ぐ義務があると考えます。

出来ていることを褒める。

もし手が出そうになっても出なかったら褒める。

好きな課題をしていて少しでも長く座れていたら褒める。

あなたはあなたのペースで頑張ればよいと伝えてあげる。

それが一番大切だと思います。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

参考文献

岡崎慎治:ADHDへの認知科学的接近,心理学評論,54巻,1号,p.64-72,2011.

昼田源四郎:ADHDのある児童に対する認知リハビリテーション,認知リハビリテーションvol.16,No.1,2011.

Poushaneh, K., Bonab, B.G., Namin, F.H., et al. :Effect of impulse control on increased attention ofchildren with attention ― deficit/hyperactivity disorder. Procedia Social and Behavioral Sciences, 5: 983― 987, 2010.