言語聴覚士パパの奮闘記

1児のパパ兼言語聴覚士が小児療育で頑張っていることを書いています

言葉の遅れ=言葉だけの問題じゃない理由

この仕事をしていると、
「ことばが遅れていて心配です……」
という相談がいちばん多いです。

もちろん、ことばの遅れは心配になりますし、発語がないお子さんであれば「コミュニケーションが取れるようになるのかな……」
と、将来への不安にもつながりますよね。

 

実際、1歳半健診や3歳半健診でも、ことばの発達に関する質問や、心理士さんによるスクリーニング検査があります。

 

「どうにか話せるようになってほしい……」
という一心で相談に来られているのだと思いますし、私自身も専門職として全力でお答えし、支援していきたいと考えています。 

 

ですが今回は、ことばの発達を考えるうえで、実はとても大事な部分があるということをお伝えしたいと思います。

 
目次
・ことばを理解することと話すこと
・理解するとは?
・話すこととは?
・ことばのビル
・言語聴覚士はあくまでも支援者の一人
・まとめ

 

  • ことばを理解することと話すこと

まず、「ことばを話さない状態」から「話せる状態」までには、どのような段階があるのでしょうか。

大まかに、以下のような状態が考えられます。

① そもそも、ことばを知らない/聞いたことがない
② ことばは知っているが、どんな音で表せばよいかわからない/音として出せない
③ ことばを知っており、音もわかっていて、口を使って表現できる
④ そのことばを深く理解し、相手に説明できる

 

「りんご」を例にしてみましょう。

机の上に、帽子・コップ・りんごが置いてあるとします。

お母さんが「りんごちょうだい」と伝えました。

① の場合
→ 無反応だったり、別の物を取ったり、ときには全部取ってしまうこともあります。

② の場合
→ りんごを手渡すことはできますが、まねして言うことはありません。

③ の場合
→ りんごを手渡し、「りんご!」とまねして言うことができます。

④ の場合
→ りんごを手渡すだけでなく、
「果物で、赤くて、丸くて、おいしくて……ママがときどきデザートで出してくれるんだ」
といったように、深い理解があります。

※ここでは他の障害特性などは考慮していません。

 

このように、「話さない」という状態の中にも、さまざまな段階があります。
さらに、自閉スペクトラム症の特性による対人関心の低さや、聴力の問題などが加わると、判断はより難しくなります。

そのため、「ことばを話さない」場合には、まず理解面を丁寧に見ていくこと、そして他に発達へ影響する要因がないかを総合的に確認していく必要があります。

 

  • 理解するとは?

「ことばを理解する」とは、どういうことでしょうか。

たとえば、車を指さして「くるま!」と言えたら、理解していると言えるのでしょうか。

私自身は、そうではないと考えています。
ことばは、あくまでも表現方法のひとつであり、道具に過ぎません。

大切なのは、その「くるま!」にどんな気持ちが乗っているかという部分です。

「くるま!(ママ、見て。ぼくの大好きな車だよ。びゅーんって走って、かっこいい!)」
「ほんとだね。赤くてかっこいい車だね。おうちにも同じ色のトミカがあるよね」

このような情緒的なやりとりがあってこそ、ことばに深みが出てきます。

つまり、車を見て「くるま」と言うだけでなく、
・好きな車がある
・ママと車について話した経験がある
・小さな車のおもちゃを知っている
・速く走ることを知っている

といったように、「くるま」という幹から、たくさんの枝葉が広がっていきます。
これが、ことばを理解するということだと私は考えています。

 

  • 話すこととは?

では、「話すこと」とは何でしょうか。

私はよく、「引き出し」にたとえて説明します。

聞いたり学んだりしたことばは、頭の中の引き出しにしまわれます。
そして話すときに、その引き出しからことばを引っ張り出します。

引き出そうとする力が弱かったり、
どこにしまったかわからなかったり、
間違えて別のことばを取り出してしまったり、
その途中で音が混ざってしまったりすることもあります。

 

これが、「話すことの難しさ」として表に出てくることがあります。

 

  • ことばのビル

ここまで、ことばの理解と話す力について見てきました。どちらもとても大切な力です。

では、発達全体の中で、ことばの発達はどこに位置するのでしょうか。

私はよく、「ことばのビル」という図を使って説明しています。

 

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この図を見るとわかるように、ことばの発達はビルの上の方に位置しています。
そこに至るためには、土台となる

・情緒的な関わり
・生活リズム
・よく食べること
・しっかり遊ぶこと

などといった基礎の部分が欠かせません。

 

つまり、ことばの遅れがある場合でも、それ以外の基礎的な部分を大切にしながら支援していく必要があります。

 

そして、この基礎の部分は、普段の生活そのものと言っても過言ではありません。
そのため、保護者の方のご協力がとても重要になります。

もちろん、すべてを完璧に行うのは難しいです。
できそうなところから、少しずつ取り組んでいければ十分だと思います。

 

  • まとめ

 今回は、ことばの理解や話すこと、そしてそれ以外の大切な要素について書いてみました。

言語聴覚士は専門職として、ことばの発達を全力で支援していきます。
しかし、それだけでは十分とは言えません。

 

保護者の方との協力があってこそ、支援は意味を持つと考えています。

言語聴覚士も、あくまでも支援者の一人として、一緒に歩んでいけたらと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。